不動産の名義人が亡くなった場合、相続人に名義を変更する登記(相続登記)を申請する必要があります。相続登記の申請の際には印紙を購入して登録免許税を納めなければなりません。この税金の計算方法は対象の不動産の固定資産税評価額(1,000円未満切り捨て)に0.4%を乗じて計算した金額(100円未満切り捨て)です。
しかし、税制が改正されて、土地については令和7年3月31日までに相続(遺贈を含む。)による所有権移転登記又は所有権保存登記を申請する場合、評価額が100万円以下であれば非課税になりました。ただし、当該免税の適用を受けるためには登記申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載しなければならないため注意が必要です。
法人を設立すると商業登記簿が作られます。商業登記には会社の商号、本店、事業目的、役員等が記録されますが、その登記事項を変更すると、原則として2週間以内に変更登記を申請する義務があります。
よく忘れられるのは、役員変更登記です。株式会社の役員には必ず任期(非公開会社であれば最長10年)があります。任期が満了すると再度就任した場合であっても重任の登記が必要ですが、重任の場合は内容に変更がないという認識で登記しなくても良いと誤解されている方もいるようです。ただ、一定期間登記申請がなされないと職権で解散登記をされるリスクがあるため注意しなければなりません。
役員の任期は会社の定款で定められているので、定款と商業登記簿を確認して任期がいつまでなのかを把握しておきましょう。
なお、2週間が経過しても登記申請は受け付けられますが、100万円以下の過料を課せられる可能性があります。
司法書士は、不動産登記や商業登記等の法務局に関係する手続きをする専門家と認識されている方が多いです。実際、不動産登記に限定した業務のみをしている司法書士事務所は多くあります。しかし、裁判所に提出する書類の作成も司法書士は業務として行うことができます。以下では、司法書士が依頼を受けることが多い家庭裁判所に関する手続きについて記載します。
相続放棄
相続放棄は、家庭裁判所に申立てすることで相続財産の全てについて放棄する手続きです。原則として、被相続人の死亡を知った日から3か月以内に申し立てしなければなりません。
相続放棄には、遺言者の除籍謄本や相続人の戸籍謄本等の書類を収集して申立書を作成する必要がありますが、司法書士が代行できます。
遺言書の検認
遺言は、公正証書で作成したものや法務局にて保管された遺言書を除き、遺言者の死後に家庭裁判所で遺言の存在及び内容を確認する手続きを経なければなりません。この手続きを検認といいます。検認手続きをしないと、相続登記や預金の払戻し等、遺言に基づいた相続手続きをすることができません。
特別代理人選任の申立
親権者である父又は母が、自分の子との間でお互いに利益が相反する行為(これを「利益相反行為」といいます。)をするには、子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求する必要があります。例えば、父が死亡して遺産分割協議をするにあたり、母と未成年の子は利益相反関係に当たります。この場合、母は子を代理することができず、第三者が子の代理として協議をします。
相続財産管理人の申立
この手続きは、相続人が行方不明で遺産分割などの手続きが行えない場合に行う手続きです。遺産分割協議は相続人全員の合意によって成立しますが、相続人の中に行方不明者がいると手続きが進まないため、裁判所から相続財産管理人として選任された司法書士等が行方不明者の代理として遺産分割協議をします。
遺産分割調停の申立
この手続きは、相続人間で争いが生じた時に行われることが多いです。各相続人の取得分等を決めて、裁判所の判決と同様な効果がある調停調書が作成されます。その他の利用方法として、後々のトラブルを防ぐためにすることもあります。
家族信託とは、「自分の財産を管理することが、認知症等によって難しくなった場合に備えて、委託者(財産を受託者に託す人のこと)が受託者(財産を委託から託される人のこと)にその財産の管理や処分を託す方法」のことをいいます。家族信託は、正式な法律用語ではありませんが、便宜上この言葉を使って制度の概要をお伝えします。
主なメリット
【認知症への備え】
例えば、親が認知症になった後に親の不動産を売却するには、成年後見人の選任が必要になります。しかし、家族信託の契約を締結して名義を受託者に移転していた場合は成年後見人を選任することなく、受託者の判断で不動産を売却することができます。
【成年後見よりも柔軟に財産を管理・処分できる】
成年後見は、一度の法律行為を目的とした利用であっても、原則として制度の利用を中止することができず、生涯にわたり後見人がつき、家庭裁判所への報告が毎年義務付けられます。また、本人にとって利益になることしかできないため、相続税対策等のための財産処分は事実上不可能です。一方、家族信託は、契約に基づき本人の意向にしたがった財産の管理や処分ができるようになります。
【遺言ではできないことも可能】
遺言の場合、財産を次に承継する者しか指定することができませんが、家族信託の場合、次の次の財産を承継する者の指定もできます。しかし他の相続人の遺留分については検討を要します。
主なデメリット
【家族間でもめる可能性がある】
受託者を誰にするのかで話し合いが難航する可能性があります。家族に信託する趣旨の理解をしてもらうことが大切です。
【新しい制度のため不明瞭な点がある】
家族信託はまだ十分に普及しているとは言えません。そのため、税務上の問題や法律上の解釈が不透明な点もあります。また、信託専用の口座を開設できる金融機関は少なく、開設できたとしても要件が厳しいケースも見られます。